Tの拾遺

(テキスト作成は1997年)

第16話 怪人レハールの罠

脚本・辻真先  絵コンテ・西谷克和

072◆レハールの眠り◆

そのあまりにも強力な魔力ゆえに、封印され眠っていた怪人レハール…と、お約束のパターンとはいえ、実体を最後まで見せずにトリトン一行を苦しめるのだから、実際のところ手強い。レハールの力は、ポセイドン族にとっても、諸刃の刃であり、常に外敵に対して作用していなければ危険に思える。傀儡と傀儡使いの立場を逆転できる怪人である。

レハールは、暗い洞窟の中でダビデの星(六芒星)を設置して、呪文を唱える。この図形は、ユダヤ教の象徴であり、妖術使いは魔神の召喚と結界の両方に使ったらしい。レハールを退けるためには、術の最中にこの一角を破壊するのが得策なのだろう。遠距離から、それが可能なのはオリハルコンだけなのだ。

073◆死人使い

レイ・ブラッドベリ作品の次は、友人レイ・ハリーハウゼンSFX担当作品のディバージョンである。公開当時、衝撃的だった骸骨の剣戟は「シンドバッド七回目の冒険」が初出であるが、「海のトリトン」全体の印象から見ると「アルゴ探検隊の大冒険」の影響の方が濃厚であろう。
立ち上がる二体の骸骨。映画「アルゴ…」と同様に、頭蓋骨がポロリと落ちると自分の手で受け止め、海中なのに足音を出して、トリトンに襲いかかる。

さて、この骸骨は何んなのでしょう。海中だからアトランティス人や陸人ではないし、トリトン族は武器を使えないらしいので、残るのはポセイドン族という事になる。地下生活に嫌気がさし、輝く太陽と青い海を求めて脱走したのだろうか。そして、ポセイドン族は脱走者の追跡にレハールを派遣し、手口の残忍さに閉口して、レハールを懐柔のうえ封印した…といった筋が思い浮かぶが定かではない。

074◆シャチ◆

シャチが登場するのは、第16話が最初で最後である。一頭単独なので、繁殖シーズンオフの雄だと見当がつく。

シャチは海棲哺乳類の頂点生物であり、イルカや海鳥、鯨なんでも食う。そのくせ、陸人に馴れ、あまつさえ鯨の追い込み漁を手伝ったりもするという。これには、陸人の肉は水っぽくてマズいので、よほど空腹でなければ襲わないという説がある。つまり、数が多い生き物なので、利用した方が良いと判断しているのである。何にせよ、当のイルカやシャチになってみなければ真相は判らない。