Tの拾遺

(テキスト作成は1997年)

第14話 大西洋へ旅立つ

脚本・辻真先  絵コンテ・斧谷稔

066◆ポセイドンの怪人

ドリテア亡き後、姿を現したポセイドン像に続き、各海の司令官たちが一堂に会する。

ドリテアは、原作にも登場する、独語起源の名称。能力と特徴は前項に記載済なので割愛。
ミノータスは、北極海の氷の迷宮に住む冷凍魔人。名称の起源は、迷宮に封印されたミノタウロスのアナロジー? デザインは、原作のターリンが原型か?
ポリュペイモスは、南太平洋担当の鮫型残虐怪人。起源は「オデュッセイア」に登場する一つ目の巨人。作品中では、オデュッセウスの策にはまって目を潰されてしまう。デザインは、羽根作画監督のオリジナルとの事だが、ソロモン諸島の伝説にも類似の鮫人が描かれている。
レハールは、この回には登場しないが、後に全太平洋を担当。原作にも同じ名の人物が登場する。独語起源の名称。デザインは、マンドリルと悪魔バフォメットのコンポジット。数多くの魔術を駆使して、トリトン一行を苦しめる。
ブルーダは、インド洋担当。名称は、「雄牛のような人」の意か? 超巨大生物と水中ブーメランを使って、トリトンを追いつめる。
ゴルセノスは、南大西洋担当。オリハルコンの短剣の輝きを反射する盾と、砂分身を操ってトリトンを苦しめる。名称は、ゴルゴンとペルセウスのアナグラムか? 武器は、ミノータスと同じくモーニング・スターを使う。デザインは、50〜60年代の古代史劇映画のディバージョンと思われる。これは他の怪人たちにも共通する事である。
ネレウスは、ポセイドンの参謀。ギリシャ神話では心優しい老神、として登場する。デザインはセイウチが基本か?
マイペスは、南極圏担当。名称は、独語の「斧で割る」か? 出番が少な過ぎて能力らしきものと言えば、バカ力しか記憶に無い。設定では、ミニ・マイペスが多数いるらしい。もしかすると「ガメラ2」の、群体レギオンのような展開が準備されていたのかもしれない。デザインは、映画「アトランティス征服」のトカゲ兵士(竜もどき)が基本と思われる。
ヘプタポーダのテリトリーは不明であるが、元は地中海担当だったのかもしれない。名称、デザイン、更に役柄も原作トリトンが基本になっている。名称は、原作で七本足のメカに乗っている事からの由来か? F. ライバー「男が悲鳴をあげる夜」でヘプタパス(七本足)という七本の触手を持った女性が登場する。同名という事になるので、ダブル・イメージが楽しめる。
ゲルペスは、ポセイドンを直接守護しつつ、北大西洋を担当する。デザインは、映画「パーティ・ビーチの恐怖」等に登場した典型的なギルマン・タイプになっている。親衛隊と呼ばれるゲルペス連隊隊員も同系統にある。名称は、ナチスの幹部ゲッベルスのアナグラムか?
以上、怪人は十名。

067◆WEAVING STORY◆

第14話は前半の総集編、BANK絵を集中投下したツギハギ・フィルムである。また、編集の妙技だけで一本、作品を作り上げてしまう監督の手腕も発揮される。各話独立完結の作品では、放映済みの作品を流しても格好がつくが、連続ドラマではそうも行かない。
この時点では、まだ回想という正攻法で切貼りしているが、後年に「ダイターン3」や「Vガンダム」等では使い回しで全く新しい作品をデッチ上げるという神業が見られる。

068◆旅イルカ◆

人間が手を変え品を替えて、全大陸に分布しているように、海の頂点生物の鯨類も全海域に存在する。同種のイルカでも、餌の多い所に定住するものも有れば、回遊し続けるものもあるらしい。そのため、「海のトリトン」では総括して定住型と旅(回遊)型に分類しているようである。
この名称が、第14話を構成する上で創出されたのなら、正に瓢箪から駒的な世界観を広げるキャラクターと思える。
このあと旅イルカが、登場するのは大西洋へ突入してからである。質より量で勝負する場面にのみ投入する事で、「機械仕掛けの神」化するのを回避している。